中国、
インドの
核平和利用に協力を表明
2006年11月21日20時40分
中国の胡錦涛(フー・チンタオ)国家主席と
インドのシン首相が21日、ニューデリーで会談し、平和利用を目的とした
インドの
核開発計画に
中国が協力することで合意した。両首脳は会談後、共同宣言を発表。両国の急成長を背景に、世界人口の3分の1を占める「戦略的パートナーシップ」の強化も示した。ただ、国境画定や対パキスタン関係など微妙な問題では突っ込んだ議論に至らなかった模様だ。
中国の元首である国家主席の訪印は、96年の江沢民(チアン・ツォーミン)前主席以来、10年ぶり。会談を終えた両首脳は記者団に対し、中印関係の強化が「世界的に意義深い」と同じ言葉を口にした。
核問題について、共同宣言には「国際的な取り決めに沿う形で、
核エネルギー分野における二国間や多国間での協力を進める」と盛り込まれた。98年の
インドの
核実験後、
中国首脳が
インドの
核開発に協力を表明したのは初めてだ。ただ、具体的な協力内容は明らかにされず、共同記者発表でも両首脳は詳しく説明しなかった。
核問題をめぐっては、双方にとっての隣国であるパキスタンとの関係が微妙に絡む。胡主席は
インドに続いてパキスタンを訪れ、ムシャラフ大統領と
原子力発電所の建設などをめぐる協力について協議する。一方、米国とインドの
原子力協力には「国際的な核拡散の防止規定に合致するものでなければならない」(姜瑜・外務省副報道局長)とクギを刺す。印パ両国とも核不拡散条約(NPT)未加盟だが、
中国の対応ぶりは二重基準だ。
こうした中国の姿勢にインドは内心、不満を募らせる。20日夜にニューデリー入りした胡主席を空港に出迎えたのはムカジー外相だった。今年だけでブッシュ米大統領やサウジアラビアのアブドラ国王、ネパールのコイララ首相らを空港で出迎えたシン首相が今回は自宅で待機した姿に、複雑な対中観がうかがえた。
複数の中印関係者によると、中国側は胡主席のインド議会での演説を希望。インド側も検討したが、結局見送った。「世界最大の民主主義国家」での議会演説は、胡主席にとって大きな
外交成果となるはずだった。
それでも今回、中国がインドの核開発協力に踏み出した背景には、日米両国のインド接近がある。ブッシュ大統領が3月に訪印し、来月にはシン首相が訪日を予定。アジアで影響力拡大をはかる中国にとって、今回の訪問には日米両国を牽制(けんせい)する狙いも込められていたとの見方が一般的だ。
一方、双方とも好調な経済関係では協力姿勢を最大限に打ち出した。両国は昨年4月の首脳会談で08年までに貿易額を200億ドルに届かせるとの目標を掲げたが、今回は「10年までに400億ドル」とさらに数字を引き上げた。インド商工会議所は同年に500億ドルに届くと予想する。
懸案の国境画定問題では目立った進展がなかった。中国の孫玉璽駐インド大使が13日、係争地のインド北東部アルナチャルプラデシュ地方(中国名・南チベット)を「すべて中国の領土」と発言して物議を醸すなど、なお曲折が予想される。
http://www.asahi.com/international/update/1121/022.html